東京地方裁判所 昭和45年(ワ)11938号・昭46年(ワ)8136号 判決
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〔判決理由〕三 被告谷田部、被告会社の責任について(原告と被告谷田部、被告会社との間の判断)
<証拠>によれば、次の事実を認めることができる。
被告谷田部は、茨城県久慈郡大子町において谷田部建材の名で建材業を営み、大型ダンプカー三台と甲車(ダンプカー、四トン積み)を保有するもの、被告会社は同町において機械部品加工業を営み、その資材、製品の運搬等のため、トラック七台を保有するもの、被告本多は昭和四五年四月初から被告谷田部に雇われ、同月末頃まで甲車の運転等の業務に従事したが、同年五月に入つてからは事故時の運行の際まで右運転業務に就かなかつたものの、退職の意思を表明していたわけでもなかつたものである。
被告会社は、その資材製品の運搬には、通常自社の保有車を用いるが、など正規の運送業者や近在の精米業者青木光男(無免許運送業者)等に運送を依頼することもあつた。そして、事故時の運行以前に、同年三月から四月までの間三回にわたり、被告谷田部の車両で被告会社の製品が千葉県まで運搬されたことがあり、これら運送については、運賃等明確な取り決めもなく、事故時なおその支払もされていなかつたが、被告谷田部、被告会社ともこれを有償の運送契約関係と考えていた。
以上の点を除いては、事故時の運行に至るまで、甲車その他被告谷田部の車両が被告会社により使用され、あるいはその製品等の運搬にあたつた事実はなく、被告本多は、被告会社に雇われたことがなく、甲車の運転手として被告会社の製品を運搬した点を除くと被告会社との関係はなかつた。
事故時の運行に至る経緯については、被告会社はその製品を千葉県内まで運搬するに際し、自己保有車や正規の運送業者の都合がつかなかつたため、事故前日電話でその運送を被告谷田部に依頼したところ、同被告の母でその事務担当者である谷田部さきみは小型ダンプ(甲車を指す)の運転手である被告本多が休んでいるとの理由を告げて被告会社の申込みを拒んだので、被告会社は自分の方で運転手は手配するから甲車を貸してくれるように申入れ、さきみはこれを了承した。それから、被告会社は被告本多に電話連絡して同被告に千葉県まで甲車を運転することを承諾させ、同被告を被告谷田部の車両置場まで同行した。被告本多が同日夕刻同所で甲車の手入れをはじめていたところへ、被告谷田部が通りかかり、数日間無断で運転業務に就かなかつた被告本多を見とがめたけれども、結局は被告谷田部と被告本多の話し合いで、被告本多が甲車を運転して千葉県に赴くこと、往路は被告会社の製品を積載し、被告谷田部の姉の義父を同乗させ、帰路は事宜により同人の荷物を積載することと決まり、被告本多は右のとおり甲車に被告会社の製品を積み、同人を同乗させて千葉県に向う途中、事故を発生させた。なお、同人の同乗等につき、被告会社が関知した事実はない。右運行に関し、被告らの二あるいは三者間に、運賃、運転手賃金、車両使用料等につき、なんらかの話し合いがされた事実はない。
以上の事実によれば、被告谷田部は、自己の被用者である被告本多をして甲車を運転させ、被告会社から引受けた同社の製品の運送等の業務を執行させていた間、事故が発生したものということができ、被告会社が被告本多の使用者として自己が借受けた甲車を運転させたものとみることはできない。(被告会社あるいは被告本多の側から被告谷田部の側に、甲車を貸してもらいたい趣旨の申入れがあり、被告本多が甲車を運転するについて被告会社の積極的な関与、依頼があつたにしても、甲車の使用や被告本多の雇傭関係に関連してなんらかの具体的な取り決めがない以上、本件事故に至る運行についても、従前に同じく甲車の所有者で、それまで被告本多を使用してきた被告谷田部が甲車の運行主体、被告本多の雇傭主、したがつて、被告会社は荷主の立場にあるものとみるべきである。この点については、たとえ、被告本多が事故前に一時他に就労していたとしても同様である。)
してみると、被告谷田部は、事故につき、甲車の運行供用者として、また甲車運転者(被告本多)の使用者として、原告に対し損害賠償の責任がある。(原告と被告谷田部の間では、被告谷田部が被告会社に対し事故前日甲車を貸渡したことが争いのない事実である。ところで、右争いのない事実は要件事実ではなく、当裁判所の認定に牴触するので、これを前提に判断すべき限りではないが、たとえ右争いのない事実を前提としても、被告谷田部は当該運行につき、被用者本多が甲車を運転することを了承し、かつ、自ら、被用者である同被告に対し被告会社にかかわりのない者を同乗させる等の用務を命じているのであるから、自賠法三条本文、民法七一五条一項に基づく責任を免れるものではない。)被告会社は、自賠法三条にいう甲車の運行供用者とも、民法七一五条にいう被告本多の使用者ともいえないのであるから、事故に関し原告に対し損害賠償義務を負うものということができない。
(高山晨)